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D3Bフォーラム設立趣旨

 

かつて人類の営みは連綿と紙に記されてきたが、紙の保存は時の世相・政権とともに取捨選択され、叡智として受け継がれるもの以外実態の記憶は忘却の彼方にある。1990年の情報革命以降は、デジタル化によって情報量の爆発が際限のない記憶を要求する時代になり、未だ人類が経験したことのない忘却できない時代が幕を開けたとも言える。

 

一方で、インターネットは情報の交換場所として実際に世界のあり方を大きく変革したが、知の集積という点では全くの聡明期にあり、我々は常に忘却を続けている。Internet archives などのプロジェクトも今までのインターネットの変遷を断片的に記憶するに留めており、集積は断片的である。忘却しないというパラダイムシフトが世界の望む方向であるとするならば、我々は知の集積方法を日常の情報交換の営みの中に埋め込まなければならない。

 

すでに情報革命が認識されて以降、情報の発生源以降で情報を整理し統合する試みは枚挙にいとまがないが、同時にそれらは連綿とした失敗の連続であったとも言える。我が国の医療情報の現状に照らせば、紙カルテが電子化され電子カルテになったものの、システムの更新の都度データは失われている。また、保存を目的に電子カルテからデータを抽出するも、抽出した時点でデータ発生時点の意味を正しく保存する術を知らないため、後日解釈する際には大雑把な解釈しかできない、或いは分段に誤解釈する状況にある。

 

このようなデータの整理・解釈しかできない状況で、ビッグデータやAI (Aritificial Intelligence) といった技術を知の集積に適用した場合、汚染されたデータから汚染された解釈が出てくることは必然である。インターネットの情報を学習した Microsoft社のAI はふんだんに差別的傾向を踏襲していることが発覚して停止された事例もあり、同じような警告は様々な分野ですでに指摘され始めている。

 

以上を踏まえると、我々がデータを生成する時点でプラットフォームが正しく設計されなければ、記憶の時代に知の集積は起こり得ない。すでにブロックチェーン技術のように情報の発生時点でデータをアーカイブしどこまでも記憶し続ける仕組みを実現できることは示されている。データを集積するプラットフォームを様々なドメインに展開することで初めて我々は情報交換革命の先の恩恵に浴することができる。そのようなプラットフォームの設計には、様々なドメインの知識を有しながらかつデータの保存と利用に対する明確な方向性と哲学を持つ諸氏の結集が必要である。データをどのように生成し、どのようなプラットフォームに提供していくのか、データ構成をデザインできる者が次の記憶の時代における知識革命を牽引する。

 

Data-driven Designer’s Bank はプログラミングにおけるデザインパターンをデータデザインに展開することで、データデザインができる人材の経験とノウハウを一般化し広く知の蓄積につながるプラットフォーム構築の助けとなることを目的に設立した。すでにそのような職にある者、職の方向性が今後データデザインに向いていく者が、ぞれぞれのドメインの知識を如何にデータデザインに落としていくか広く議論する場を提供する。

 

2021年3月12日
D3Bフォーラム理事長 粂直人

 


今現在、本邦は、かつての社会状勢と異なり、少子化・超高齢化、新興感染症対応などの状勢・環境の変化を踏まえた社会システムの構造や機能を、急ぎ改革すべき状況にあると推察しています。

 

かつて、工作フェーズでデジタイズ・デジタライズが主となっていたデジタル化時代から、デジタル・トランスフォーメーションをはじめとした創造思考が必須となっている情報化時代となっているため、情報システムの構造、ならびに、システムとの共存・共栄の体制を、今一度確認・見直し、更新・刷新していく必要があると考察します。

 

本活動では、このような社会背景や現状を踏まえ、社会の高度情報化を支える基盤となる情報システム構成や運営体制などを、システムアーキテクチャ思考とともに中長期的な全体最適を、社会を支える様々な領域・構成要素の垣根を超えて、横断的な協創談義・構想・提唱・検証等が実践できますことを期待し、当方も注力・協働させていただければ幸甚です。

 

2021年3月12日
D3Bフォーラム前理事長 島井健一郎

 


英語圏の外にあり、東アジアの東端にある我が日本国は、少子高齢化に伴い、人間の進化とITの進化が、反比例の曲線を描く状況に陥っています。

 

世界的な潮流としては、今後、ニューラルネットワークが次世代基盤の方向性として優位性を高める中、未だに我が国では、オフィスオートメーションの道具以下であり、実は全く削減しないTCO削減の詭弁・方便でしかありません。

 

我が国が抱える課題は、直面するIT人財基盤の崩壊に際して、次世代の社会基盤構築を担う人財を、その知財を、如何に結集するか?というところにさえ、対策が打たれていない点にあります。さながら大東亜戦争での南方戦略そのままです。

 

縦割りのシステムは、矮小な組織信奉のみを助長し、本来の目的外のことを、優秀なエンジニアに強要し続けます。傍から見るに、家庭で相手にされない老害の存在確認の場として、延命されているシステムの為に、優秀な人的労力が削がれているのが現実です。

 

では、なぜ、そういうことが未だに改善されないか?というと、古来、日本は、情報戦略というものが存在せず、明確な論拠をデータから導き出すということが、体系化されず、また、人的な教育・訓練もされて来ませんでした。戦前の軍事教練そのままの気合・根性論のみが優先してきた事実があるからです。未だにB-29を竹槍で落とす発想です。

 

その結果、多くの企業では、情報部門は、その名からは名ばかりの主業務で使い物にならない人材の人足寄せ場となり、明確な仕様など一切定義されません。

 

当然、プロフィットセンターが決めた全く根拠のない投資予算の「枠」自体が仕様となり、ベンダー丸投げ上等の要員を情報部門の責任者とすることが企業文化として継続して来たからです。(裏返せば、ここに気付いている組織は、圧倒的な成長を遂げているのは周知の事実です)

 

そのような状況を打破するには、まず、志を高く、強い向上心、協調と協創を共に進める動機付けを持ったエンジニアが、現状の呪縛に捕らわれず、現実課題と未来に対して、実効性のある対策を議論できる場の存在が不可欠と痛感し、このフォーラムを立ち上げるに至りました。

 

ここに集う皆さまと、より建設的で具体的な案と実行方式を議論できればと思います。

 

2021年3月12日
D3B事務局長 三浦隆之

 

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